「プロレス逍遥」


text by 青沙流 銀河


自分はよくBARで酒を飲んでいるのだが、そこでちょくちょくお目にかかるのがプロレス・格闘技ファン。

「どちらの団体のファンですか?」
「誰のファンですか?」
「誰が一番強いと思いますか?」

開口一番、こんな質問が決まって自分に襲いかかってくる。

ん?いきなり、試合開始直後にロープに振られた気分だ。
始まりは、特に初めて対戦(会話)する時は、手四つから相手の力量を探る攻防からではないのか?
軽い会話から手探りで相手のプロレス経験値を探るのが常套手段ではないのか?
そして「プライドとか見ますか?
この前の試合では、なになにがどうのこうの、強い弱い・・・」だ。

無理矢理に相手のリングに押し上げられ、ゴングが打ち鳴らされる瞬間でもあり、パンチ、キックの雨あられである。
確かに、その時々に好きな団体・好きなレスラーはいる。
もちろん、プライドも見る。
しかし、この手の質問から入って来る奴らの大抵は、「昔は、プロレスを見ていました。でも、今はプライドやK-1です。」だ。
お前らは、プロレスに何を感じ、何を見ていたのか?

自分とプロレスの出会いは、テレビで全日本プロレス、新日本プロレス、国際プロレスがゴールデン枠で放送している時だったが所詮統括機構(協会?)を持たないプロレス興行会社においては、個々のレスラーが己のアイデンティティーを求め離合集散を繰り返し、俗に言うインディー団体が雨後の竹の子のように乱立する。
大仁田厚がFMWを旗揚げした頃は、訳のわからん選手が多く「ここの団体は、アホか?」と思っていたが、見ていく内にズルズルと大仁田劇場に引きずり込まれて行く自分があった。
ギミック好きの自分はW★INGにもはまり、その流れで大日本プロレスにも出会った。

気がつけばインディー団体、特にデスマッチ好きになっていた。
もちろん、今でもそうなのだが肉体と肉体をぶつけ合う純プロレス(?)も好きなのだが、思い起こせば国際の金網デスマッチやインディアンストラップデスマッチに男心(当時は鼻垂れ小僧だったが)を奮わされ、新日の釘板デスマッチに釘の上に落ちたら人間死んじゃうよとハラハラドキドキし、全日の史上最凶悪コンビが繰り出すフォーク、五寸釘、火炎等に恐怖の地獄を見た日には涙が本当に出そうになるぐらい恐かった。

それが今では釘の上に落ちるは、ガラスや蛍光灯はあたり前、爆破はあるは、レスラーは火ダルマになるはでアイテムをあげればキリがないが、デスマッチは確実に進化(?)し、対戦相手を痛めつける代償に自分自らもデスマッチアイテムにダイブする自虐精神がないとデスマッチを表現できないものとなっていて、外国のデスマッチファイターなんかが一度は日本のデスマッチ団体のリングに上がりたいと思わせる程のデスマッチ先進国になっている。

が、その過激さゆえに貸してくれる会場も少なく、テレビ放送もNG。よって、スポンサーも付きにくくなり世間には露出度がほとんどない状態である。
当然、客の入りも寂しいものである。団体に資金さえあれば、過激なデスマッチや過激なストーリー性を持たなくていいのにと思う時もあるが、何か抑圧的なものがあると人と言うのはとてつもない事をしだすもので、その負荷が大きければ大きい程、反動は大きくインディー団体の原動力になっている。
だから、デスマッチは進化したのかもしれない。
ムービーから飛び出してきた、レザーフェイスやフレディ、全身着ぐるみのバイオモンスター等のギミックもまたその内の一つだろう。

クリスマスに行われた大日本プロレスのデスマッチで、アブドーラ小林が対戦相手に放った言葉、「赤い雪を降らせる」。
ちゃちなギミック言葉ではあるのだが、「血はマットに咲く赤い薔薇」に次ぐキナ臭さが自分はシビレルのである。
そして、このキナ臭さとギミックが団体、会場、試合、レスラーに感じられた時に、いつしか子供の頃親に手を引いて連れて行かれた日本の移動型サーカスや、街を練り歩くチンドン屋、大人になってから見に行ったストリップなど、決して日の目を見る事のない世界とオーバーラップするのである。
確かに、プライドやK-1の格闘技系の選手達は選ばれしトップアスリートで、ファイトスタイルもクールだ。
しかし、そこには勝ち負けだけが存在し、後にも先にも語られる事のない結果だけの世界であり、人間味としての表裏やドロ臭さもなく、心に一石を投じられることも少ない。

プロレスには、花ではなく「華」がある。

ただ、人に手を加えられ花を咲かせて「綺麗ね」ではなく、キナ臭さとギミックが相見えた時に本物を越えたドラマが生まれて華となる。

そして咲き乱れて心に散っていき、夢と感動とファンタジーが広がって記憶となり、自分をレスラーにダブらせる事ができるのである。

それが、肉体だけのぶつかり合いであろうと、デスマッチであろうと、そこが四角いマットでロープが三本であれば・・・




name: 青沙流 銀河 (あおさる ぎんが)
birth: S42年3月25日生まれ。
prof: 大阪芸大中退。快楽主義者。自称新右翼。ジムビーム ライ、カルピス愛飲家。